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二つの赤い部屋

インターネットサーフィンをしていると、小さなウィンドウが開くことがあります。ふとした弾みで、誰かの部屋のドアに設置された魚眼レンズをのぞきたくなる瞬間があります。そういった日常の瞬間にも、怖い話は潜んでいるようです。そのウィンドウや魚眼レンズの先には「赤い部屋」があるのかもしれません。

赤い部屋とは何か?

「赤い部屋」にはインターネットの普及によって発生した現代の怖い話と、インターネット普及以前から原型の存在していた怖い話の二つがあります。二つの「赤い部屋」は、題名以外には共通項を持たない話なのですがセットで扱われることが多いのです。




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インターネットの「赤い部屋」の概要

インターネットに夢中になっているある少年は、同じくインターネットに夢中な友人から「赤い部屋」の話を聞く。「変わった広告ウィンドウが開いていてもそれを閉じてはいけない。それは赤い部屋からの誘いだから」と。家に帰った少年はインターネットに没頭する。ふと、「赤い部屋」の話を思い出すと、「あなたは好きですか?」とだけ書いてある広告ウィンドウが画面上に出ていることに気づく。話の内容を思い出しながらも、少年はウィンドウを閉じる。しかし、何度閉じてもウィンドウは開き続ける。何十回目かの閉じる操作を行ったころ、少年はウィンドウが変化していることに気づく。「あなたは」と「好きですか?」の間から何か別の言葉が見え始めているのだ。慌ててパソコンから離れる少年の目の前で、ウィンドウが勝手に閉じては開く動作を繰り返し始め、文字列が「あなたは赤い部屋が好きですか?」へと変化した。次の瞬間、画面が赤く染まり名前と思しき文字列が次々に現れていく。最後に出てきた名前は「赤い部屋」の話をした友人の名前だった。……少年は意識を失った。

もうひとつの「赤い部屋」の概要

ある夜、郊外を流していたタクシーの運転手は全身を赤で統一した美人の女性を乗せる。美人だからいろいろ話題を振ってみるものの、目的地を告げてからずっと女性は黙り込んだままだ。目的地である彼女のアパートに到着し、彼女が部屋に戻ったのを確認した運転手は彼女への未練から彼女の部屋の魚眼レンズから様子を伺おうとする。しかし、部屋の中も彼女の服装と同じく真っ赤で様子がよくわからない。仕方ないので運転手は帰社する。数日後、同僚が「幽霊を乗せた」という話題で持ちきりだったので運転手もその話の輪に混じる。どうも話を聞いていくと、幽霊とはあの真っ赤な美人のことらしい。同僚は言う。「あの幽霊、目まで充血したみたいに真っ赤だったなぁ」……運転手は気づいた。自分が覗き込んでいるとき、彼女もまたこちらを覗き込んでいたのだと。

「赤い部屋」の分析

二種類ある「赤い部屋」の話は、それぞれの個性がある怖い話といえます。まったく違う内容でありながら、聞き手・読み手に訴えかけてくるものを感じます。

インターネットの「赤い部屋」考察

インターネットの「赤い部屋」は、「邪魔な広告ウィンドウを消す」という行為が非日常に繋がっていたというストーリーになっています。一方で、当たり前に行っていた行為を牽制する目的が背景にあるようにも感じられます。そもそも、広告ウィンドウは表示されることだけでなくクリックされることに意味があります。ジャンプ先のサイトを訪問してくれることが目的なのです。しかし、この「赤い部屋」では広告自体がクリックされることを目的としていません。むしろ閉じられることを望んでいるようです。

「赤い部屋」は進化した怖い話だ

「赤い部屋」の話はまず、なぜ「この「赤い部屋」に二人が迷い込んだのか」を考える必要があります。「インターネットサーフィンの最中に迷いこんだ」という理由を持ち出すと、友人から話を聞く以前に迷い込んでいてもおかしくありません。となると、「友人から赤い部屋の噂話を聞いた」ことが原因なのではないでしょうか。「赤い部屋」の話を聞いたことでスイッチが入り、広告ウィンドウが現れた……と考えるのが自然です。話を聞いたものの元に現れる怪異は、大抵の場合家の外からやってくるのですが「赤い部屋」の場合、インターネットを使って聞き手の元に直接やってくることが出来るという性質を持っているのです。まさに怖い話の進化系であるといえます。

もうひとつの「赤い部屋」考察

人は、「変わり者だけど存在感がある」という印象の人に惹かれることがあります。こういった浮世離れしたところのある人のことを「婆沙羅(バサラ)」と呼びます。婆沙羅には、「異邦人」という意味があり幽霊にも通じるものを持っています。この話に登場する赤い女性もまた「婆沙羅」で、タクシーの運転手が部屋を覗き見たいと感じたのも無理はないといえます。

見ているのは自分だけではない

ドイツの哲学者ニーチェは自著の中で「深遠を覗き見るものは注意しなければならない。深遠を覗き見るとき、深遠もまた私たちを見ているからだ」と記しています。知的好奇心への戒めとして残されたこの言葉は「赤い部屋」の話のテーマでもあります。運転手は変わった女性への興味から部屋を覗けないかと考えていますが、女性もまた自分を知ろうとする運転手の様子を見たかったのです。運転手やその同僚はすぐに立ち去ったから難を逃れましたが、もしもあのまま見続けていたらどうなっていたかは想像に難くありません。この「赤い部屋」の話は、怖い話を知りたがる人たちへの戒めでもあるのです。


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二つの赤い部屋






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