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草木も眠る丑三つ時の話

昔から日本には、「怪異と出会う時間」と言うものがあります。夕暮れ時の午後四時から六時ごろは、夕日に照らされて向こうから来る人が誰かわからない「誰ぞ彼」から「誰彼」と書いて「たそがれ」、または「逢魔が刻(おうまがとき)」と呼びます。もう一つの「怪異と出会う時間」が太陽の元で生きる人も動物も草木さえも眠り、闇の中で生きるものの時間となる午前二時の「丑三つ時」です。この丑三つ時を舞台とする怖い話を解析してきます!

丑三つ時の話

「丑三つ時」とは、日本独特の時間表示法である「延喜法」という12時間を六等分して数える方法の元での時間表示です。12時を「九つ」として二時間ごとに八つ・七つ・六つと減らしていってまた12時になったら九つに戻るという独特の数え方をします。さらに午前と午後で六等分ずつにされた時間に干支を当てはめていきます。つまり午前二時以降は「丑の刻」になるというわけです。




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深夜に出会う怪異とは

延喜法が使用されていた昔は、今ほど夜間照明が発達していなかったので月の光か提灯くらいしか頼りにならなかった時代です。そのため、「明かりが届かない場所から何かが飛び出してくるかもしれない」という根源的な恐怖が強く存在していたのです。そのため、昔の人は夜に様々な怪異と出会ってきたのです。

百鬼夜行

昔から、夜は鬼の行列が練り歩くといわれその行列を「百鬼夜行」と呼んでいます。古典の中には百鬼夜行に出会った人の話を収録したものもあります。

のっぺらぼう

小泉八雲が「怪談」の中で紹介したことでも知られる妖怪のっぺらぼうもまた、夜に出会う怪異です。明かりの少ない夜は、怪異と人間の見分けも付け辛いのでのっぺらぼうのような怪異の独壇場となるのです。

置いてけ堀

現代では慣用句となっている「おいてきぼり」と言う言葉も、元をただせば夜に出会う怪異の一つです。現在の墨田区辺りにあった「本所」は水路が多かったので魚釣りにはもってこいのロケーションでした。しかし、夜に魚を釣って帰ろうとすると水路から「おいてけ、おいてけぇ」という声が掛けられるのです。ここで魚を置いて帰らなければ自分が水路に引きずり込まれてしまうこともあるのです。

午前二時に行われる丑の刻参りとは

しかし、「丑三つ時」の代名詞と言えばやはり「丑の刻参り」でしょうか。丑の刻参りは寺社の木にわら人形を五寸釘で打ち込むという日本独特の風習で、千年の歴史を持つ呪術でもある丑の刻参りは現代でも行われていると言われています。

丑の刻参りの始まりとは

丑の刻参りは、今から1000年以上前に「宇治の橋姫」と言う女性が最初に行ったとされています。夫を後妻に取られた憎しみから、元夫と後妻を呪う為に鬼になるための儀式を行ったのが最初と言われています。この時橋姫が行ったのは「白装束に身を固めて鉄輪を頭にかぶり、髪の毛を逆立たせて明かりを灯し一本歯の高下駄を履いて宇治川を二十二日間渡る」と言うものでした。二十二日に渡る行を行った橋姫は鬼となり本懐を遂げたと言われています。

丑の刻参りと陰陽道の出会い

しかし、橋姫が行ったこの丑の刻参りは現代に残っている丑の刻参りと違って、わら人形も五寸釘も出てきていません。丑の刻参りが現代の形になったのは、室町時代に作られた能の謡曲「鉄輪」からだといわれています。この「鉄輪」は宇治の橋姫の話をモチーフにして作られたもので、有名な陰陽師・安部清明が橋姫の元夫を守る役どころで登場しています。この時、清明が使ったのが陰陽道で使う「形代(かたしろ)」と呼ばれる紙人形で、元夫の身代わりを作って鬼と化した橋姫の怨念を退けたのです。この形代の概念が導入されたことによって丑の刻参りは現在の形になったといわれています。

丑の刻参りの作法とは

丑の刻参りは、一週間掛けて午前二時に神社の境内の木に相手の髪の毛や爪を入れたわら人形を据え付けて五寸釘を打ち込む儀式です。この際の衣装は橋姫と同じように白装束を着て頭にはめた鉄輪に火をつけたろうそくを立てて行うのが正しいとされます。しかし、丑の刻参りは誰かに見られるとその効果が全て自分に跳ね返ってくると言われているので、現代では実行するのが難しくなっているようです。そのため、怖い話の中には丑の刻参りの目撃者に襲い掛かろうとする実行者の話などがあります。丑の刻参りは元々が「鬼になろうとする者のための儀式」なので、丑の刻参りを実行した時点で心も鬼になっているのかもしれません。

丑の刻参りのメカニズムとは

丑の刻参りのように人形を使った呪いは世界中に存在していると言われています。また、丑の刻参りのように誰かに見られるリスクがないやり方も存在しているとされています。これらの呪いとはいったいどのようなメカニズムで効果を発揮しているのでしょうか?

マイナスのプラシーボ効果

医学用語に「プラシーボ効果」という言葉があります。日本語では「偽薬効果」といい、医者が患者に「これは特効薬だ」とビタミン剤などを与えるとたちまち症状が快方に向かうと言った、「思い込みによる薬効」を示しています。このプラシーボ効果が他人の健康を害する方向で働く現象を「マイナスプラシーボ効果」と言います。丑の刻参りはこのマイナスプラシーボ効果が働いていると言われています。丑の刻参りの対象となった人物に、実行者以外の人が「あなたは実行者に恨まれている」ということを教えられることで、丑の刻参りと連動した体調不良が現れてくると言うわけです。

呪いは法律で罰せられない

日本の法律では、「呪いで他者の命を奪った」と言う事実があっても法律で取り締まることは出来ません。法律とは行いを取り締まるものであって、心を取り締まるものではないからです。この事実が現代でも丑の刻参りを実行する人を後押ししているのかもしれません。しかし、法律を拡大解釈すれば「『相手を呪っている』という事実を流布することで心身に害を与えた」という理由で脅迫罪を成立させることは可能なようです。現に、戦後以降に丑の刻参りを行ったことで逮捕された人が存在しています。

「人を呪わば穴二つ」の理由

昔から「人を呪わば穴二つ」といい、呪いは相手だけでなく自分にも災厄を招くものであると言われています。なぜなら、呪いを掛けるという行為は橋姫の話を見てもわかるように「自分自身を人ならぬものに変えて他者に害をなす」事だからです。つまり、丑の刻参りなどで誰かに呪いを掛けることは、人間を辞めることと同じなのです。例え憎しみや恨みを誰かに対して持つことがあっても、丑の刻参りなどで発散してはいけないのです。


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